倉敷の本質は観光地の中だけではなく、
人の中にもある

 皆さんの中では「倉敷」といえばどのようなイメージでしょうか?
 倉敷で学生として活動する前を思い返したとき、私たちの中にあった印象は「倉敷は白壁のまちで、歴史もある観光地でも人気なまち」というハード面でのイメージでした。しかし、様々な活動で倉敷の人と関わっていくなかで、「倉敷の本質は白壁や観光地の中だけではなく、人の中にもあるんだ!」と思うようになりました。それは、先人たちから受け継がれてきた暮らしの文化であったり、まちの人々の先見の目であったり、倉敷に対する情熱であったり、自分にしかない価値観やこだわりなど…。また、倉敷に住む方々とのお話は、「自分だったらこのまちで今後どんなことがしたいだろう。」「自分にとって暮らしに対する価値観」はどこにあるのかな?」と自分と向き合う機会にもなりました。
 「このことをもっと多くの人に知ってほしい」「倉敷の学生たちにも、もっとまちと関わって自分なりのこのまちの良さを見つけ、好きになっていってほしい」私たちの「倉敷まちなか文書」プロジェクトはそこから始まりました。

住民とあるき、まちを学ぶ。
まちあるきワークショップ

 「倉敷まちなか文書」は倉敷市東町にある「まちなか研究室東町」の活動「まちあるきワークショップ」の一環として取り組んでいます。「まちあるきワークショップ」は、倉敷市中心街で、子供の頃から倉敷で暮らしている人をゲストに迎え、まちを歩きながら暮らしの文化や歴史、地域社会が抱える課題について学ぶ活動です。倉敷には「観光地」という姿だけでなく、代々まちとともに生きてきた先代が残した暮らしの豊かさに対する普遍的な価値観や歴史によって築き上げられ、文化や先代の思いが積み重なり今の倉敷があります。
しかし、現在では便利さを求めて生活が変化したことによって、文化や伝統が失われつつあります。私たちは、この「まちあるきワークショップ」で実際に倉敷に住む方々と歩きながら、先代から伝わるまちの歴史や文化、暮らしの話を聞くことで、まちの人の思い出を、まちに散りばめられた記憶を、本誌「倉敷まちなか文書」に記録し、これから倉敷で暮らすまたは活躍する人たちに繋いでいきたいと思っています。

過去のまちあるきワークショップ

第1回
【テーマ】「自分が描く倉敷での暮らし」
【ガイド】難波永芳 氏(倉敷東町 難波邸)
【開催日】2016年4月10日(日)


第1回目となる本ワークショップでは「自分が描く倉敷での暮らし」をテーマとして、難波永芳氏に講師を招いてまちを歩き、倉敷東町の歴史や地形、かつて呉服店であった難波邸の歴史を学びました。まちの中で仕事をし、暮らすならどんなまちに住みたいか、テーマに沿って考えてもらいながら、参加者によるグループ発表を行いました。
 
第2回
【テーマ】「はしまやの歴史と東町」
【ガイド】楠戸攸一郎 氏・楠戸恵子 氏(はしまや呉服店)
【開催日】2016年6月3日(金)


第2回目となる本ワークショップでは「はしまやの歴史と東町」をテーマとして、6月初旬に開催されていたさつき展と同時開催しました。樹齢250年のさつきを眺めながら、はしまや呉服店の楠戸攸一郎氏・楠戸恵子氏に、代々受け継がれるはしまやの歴史と商人としての心、東町への想いを自身の思い出とともに語っていただきました。
 
第3回
【テーマ】「中と外から見る倉敷」
【ガイド】上田京子 氏・高木なおみ 氏(喫茶ウエダ)
【開催日】2016年7月29日(金)


第3回目となる本ワークショップでは、「中と外から見る倉敷」をテーマとして、地元住民から観光客まで親しまれる老舗喫茶ウエダの上田京子氏・高木なおみ氏を講師にお招きしました。昭和モダンを代表する喫茶ウエダの外観を背に、喫茶ウエダの歴史、地元の方から観光客まで様々な人の目線からみた倉敷の印象についてお話を伺いました。
 
第4回
【テーマ】「地図にのらない倉敷の思い出」
【ガイド】森田稔 氏(森田畳店)
【開催日】2016年10月21日(金)


第4回目となる本ワークショップでは、「地図にのらない倉敷の思い出」をテーマとして、幼少時を倉敷で過ごし、現在は本町通りで畳職人として生きる、森田畳店の森田稔氏をまちのガイドにお招きしました。地図と比較しながら森田様の幼少時代の思い出を伺いつつ、忘れられつつある倉敷の歴史や文化を学び、参加者によるグループ発表を行いました。